「制度経済学」の歴史と理論を概観した『
入門 制度経済学』において、ベルナール・シャバンス教授は、青木昌彦・スタンフォード大学名誉教授らが進化ゲーム理論等に依拠して切り拓いた「比較制度分析(Comparative Institutional Analysis) 」をバランス良く取り上げている。この講談社学術文庫として蘇った書物は、「比較制度分析のまだ発展途上にあった段階での作品」(学術文庫版へのまえがき)だが、「それだけにかえって正統派経済学に対する批判的問題意識などが、より鮮明に述べられている」(同)野心作かもしれない。
確かに、私も購入した当書の
初版は1995年で、以来13年あまりの歳月が流れている。だが、青木氏の展開する「多元的経済の普遍的分析」という方向性自体は今も肯諾できるし、何より「新古典派(正統派)経済学(=ワルラス均衡等)」の欠所を踏まえ、「経済主体の限定合理性」はもとより、「組織型の多型性」などといった視角に基づく、新たな分析手法は些かも色褪せていないと考える。とりわけ、「制度経済学」においては「組織」及び「情報」がポイントになるのだが、本書では「情報効率性」をキーとして「組織型」を提示する。
ここで、「制度とは何か」について触れてみたい。「制度」を標準的教科書的に「個人間の諸関係を支配するルールの集合」(
スロウイン・エッゲルトソン)と定義可能であるけれど、青木氏は「制度とは、人々のあいだで共通に了解されているような、社会ゲームが継続的にプレイされる仕方のこと」と概念化する。この「共通の了解=共有された予想」という一種の心理的側面を押し出すことで、「ルール」は文字通りの「法令規則」という意味を超え、「非公式な慣習」なども「制度化」され、一定の頑健性、保守性を持つようになるのだろう。