「Q.E.Dシリーズ」に出てくるサブキャラクター“御名形史紋”が密室殺人の謎解きをします。
だからといって、本作は決して「Q.E.Dシリーズ」を読んでいなければ理解できない話ではありません。
きちんと独立した一遍の物語になっています。
が、伊勢物語のネタを仕込み、それを現代の殺人事件に絡める、といった手法は全く同じであり、
尚かつ現代の殺人事件の謎解きを、御名形史紋がその博覧強記ぶりを発揮して
まるで全て知っていたかのようにあっさりと解決してしまうといった設定も同じ。
ついでに言うと、現代の殺人事件がミステリーとしての出来映えという点でイマイチなのも・・・。
違うのは、桑原タタルが歴史上の怨霊や妖怪達の代弁者となってモノ語るのに対して、
御名形史紋は、作品中本人が言うとおり歴史にはそれほど興味はなくて(それでも凄いが)、
歴史に出てくる毒、あるいは歴史の含む毒、また、毒草そのものに関する知識を語る点でしょうか。
独立した作品ですが、言わば“姉妹作”のようなものですね。
しかし、「Q.E.Dシリーズ」の読者からすると、御名形史紋のキャラクターが本作では立ちまくっていて、
いまいち分かりづらいあちらの主人公の桑原タタルとのキャラの違いが本作を読むことで見分けが付くかも。
かなりエキセントリックな、愛すべき毒草師。個人的には豊川悦治さんあたりを脳内で充ててます。
「キャラクターを設定してしまってからストーリーが書かれている」ような印象ですが、
作者が御名形史紋を突き放すことに成功しており、また今後の見通しも分からないことから
“これは、こういうキャラクターの出てくる一回こっきりのお話ですよ”というような、
ある意味で潔さみたいなものも感じられます。
今や巨大になってしまった「Q.E.Dシリーズ」読者のための一服の清涼剤、
あるいは高田崇史ワールドの入り口としての読み切りものとして。