育毛剤を使用していたオリンピック選手がドーピングでひっかかるといういささか気の毒な事件が以前にあった。毒と薬とは表裏一体で、不可分のものである。
そんな毒と薬の世界史上の様々なエピソードをたくさんちりばめて、その歴史を見ていくのが本書である。古代の博物学から錬金術のようないささか怪しげなところまで、そして現代の物理・科学・薬学の最先端まで筆は及ぶ。歴史への見方も深まるし、「トリビア」的な知識も多い。
その進歩は何より人類の技術・文明の歴史であるし、特に「毒にも薬にもなる」という点で、特に象徴的である。ますますそれらが進歩を見せる今日、化学物質を毒にも薬にもしてしまうのは我々人類のモラルや人間性である。はたして技術の進歩に耐えうるように、モラルも進歩しているのであろうか。いささか考えてみたいところである。