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商社マンの沖は、社内では「戦列外」とみなされている京都支店長に配属された。社長や相談役の接待が主要な任務であるこの肩書きをまとい、鬱屈した日々を送る。若いころ開発輸入のために汗水たらして開墾したインドネシア・スマトラ島のとうもろこし畑に今も思いをはせ、そのとうもろこしを飼料にした養豚場の建設事業計画はいまだあきらめきれない。長く暖めていた夢と現在の自分のありさまの間で葛藤していると、ある日、息子の忍がバイクで事故を起こし不運にも左足!!切断の憂き目に遭う。かつて米国の片田舎の小さな町、ツーソンに駐在していたころまだ幼かった娘、あけみは日本語が不自由だ。海外駐在中に苦労をかけたうえ、日本に戻るやいなや東京と京都で離れ離れになってしまった妻、和代には心では申し訳ない気持ちで一杯だが、忙しさにかまけて優しい言葉一つかけてやれない。
沖はただ、日々起こる煩瑣なできごとややりがいを感じられない仕事に苛立ちを覚えながらも、一人のサラリーマンとして真面目にそれらをこなしてしまう。しかし、悩みばかりを作る周囲の出来事に取り巻かれるうち、彼にとって家族とは何か、自分の人生とは一体何だろうかという問いが生まれてくる。
そんな主人公、沖を淡々と描き、企業戦士が思い悩む様への共感を誘うこの小説には、!!著者が彼らに対して覚える共感が一貫して流れ、暖かい眼差しがあふれている。自分の人生で何が大切か、という素朴な問いに即座に答えられる人は少ない。そんな問いにますます答えにくくなっている時代で、時を隔てても決して古びない一つの人生の物語がここにある。
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