87歳の生涯をおくった、骨太な小林多喜二の母セキ。多喜二や5人の兄弟姉妹を見守り、夫を信じ、懸命に生たセキ。
貧困の中で生まれ育ち、嫁ぎ先でも貧しい暮らしが続いたが、それを当然と思い、ただ6人の子供達を愛し懸命に見守る姿の骨太さが印象的だった。そして、家庭の事情で結婚したものの、その夫に対しても信頼を決して忘れず、大切な伴侶として、共に一所懸命働いた姿が美しく見えた。三浦綾子氏はセキをおおらかな人と解説してるが、その反面、本人の言葉では「不安症なんだよ。それで子供達にも心配かけてしまってる」と語っているのが印象的。多喜二の虐殺以後、セキの心が混沌となるが、キリスト教を通して生き方のヒントを得て「心安らか」になった。多喜二の死の悲しみから立ち上がり、気丈で丈夫な体で87歳の一生を終えた。「人が喜んでくれるのは、何より力になる」というセキの言葉の通り、多喜二死後も懸命に生きた姿が輝かしかった。
解説に、三浦綾子氏はセキの心中に共感してセキを描き、多喜二を虐殺したような暗黒の時代を再びもたらしてはならないという祈りが込められていると書かれていた。まさに、終戦記念の8月に読むに相応しい一冊。