ペッピーノ一座の協力を得て、はるばる大草原を走破してきましたが、バイアブランカの街に母さんはいません。地元の有力者モレッティは、その死さえ示唆し、マルコは悲嘆に暮れます。ここまで幾多の苦労を重ねて連れてきてくれたペッピーノ達に申し訳なく、マルコは絶望の言葉を吐きます。
「僕は何かに呪われているんだ!」
カルピスの名作劇場でこのようなセリフを吐く主人公は他におらず、設定の妥協を許さない高畑勲と深沢一夫のこだわりを感じます。失意の中で街をうろつくマルコは偶然から、自分の叔父であり、このように自分に苦労の旅をさせた張本人であるメレッリと出会います。彼はマルチェル・エステロンと偽名を用い潜んで暮らしていましたが、マルコのこれまでの苦労が全て自分のせいであると悟ったメレッリは自分の身を鉱山現場に売る事で、マルコの旅費の工面をし、母アンナに会わせようと決心しますが、最後まで自分の身を明かそうとはしません。
ここまで来てマルコに自分の罪を白状する事もなく、また自分が仕送りの金をくすねていた事の証拠となる母さんからの手紙を燃やして自己保身を図ろうとする姿は、複雑で小市民的でずるく、善悪の狭間で揺れるその心の内は、とても子供相手のアニメのキャラクターとは思えません。
ともあれメレッリのお陰で手がかりを掴んだマルコは汽車でブエノスアイレスに戻る事になります。この巻で良かったのは、母さんの所在の手がかりを掴んでフイオリーナに報告する場面ですね。あまり感情を面に出さない彼女がマルコに抱きつき、泣きじゃくりながら「よかったわね、マルコ。本当によかった!」と言うその姿はホントに真情に溢れていて、誰かの喜びを心底喜べるという事が、どれだけ素晴らしいかという事が実感できます。