牛車の商隊がくれたロバの「ばあさま」は、高齢と疲労から、とうとう倒れてしまいます。
もう、マルコの旅を助けてくれる人は誰もいません。マルコはただ、とぼとぼとアルゼンチンの大陸を北に向かって歩きます。風吹く荒野に、その心象風景を奏でるかの様な、暗い切ない音楽・・・・・・。本当に言い様の無い寂寥感が迫ってきます。 ベースとなる原作ではこういうマルコの旅が本当のところなんでしょうが、コレで一年放映してたら、ホントにただ辛いだけで話が保ちませんよね(笑)。
こういう所から逆に、高畑演出と深沢脚本は、「旅するマルコ」を援助する様々な登場人物、エピソードの積み重ねに心を砕いてきた事が解ります。
波濤の旅の末、マルコはお母さんに再会します。病床にあった母さんは、マルコの来訪によって文字通り命を吹き返し、マルコは泣きじゃくりながらつぶやきます。
「来て良かった。本当に来て良かったんだ!」
このカタルシスを得る為の道のりのなんと長かった事でしょうか(笑)
母さんとジェノバに帰れる事になり、帰途に向かう船の上から、マルコは、自分を苦しめ、惑わせ、様々な人と出会い、人々に助けられ、時には身を挺にして人を助け、人間的にも大きく成長させてくれたアルゼンチンの大陸を、もの哀しい鈍い表情でじっと見つめます。
彼は、こんなに散々な目に遭わされた大陸を嫌悪しているでしょうか・・・。いえ、決してそんな事はありません。
「帰ってくるって、マルコはきっとまた帰ってくるって・・・・」
マルコが帰る船を見つめるフイオリーナの表情は、萌えて逝ってしまいます・・・・(何のハナシや!!)
そう、マルコは立派なお医者さんになって、またアルゼンチンに戻ってくるでしょう。
アニメーションの「母をたずねて三千里」という長い物語は、その話の構造上最後まで、シンドイ話の連続で、この物語を最後まで見続けるには、相当程度の精神的な体力が必要で、高畑・宮崎監督が今まで手がけてきた作品の中でも不思議に振り返られる事がありません。
だけど、この長い、様々な民族的な風土、風習を舞台にした骨太の物語を最後まで見届けた後には、体に芯が入った様な気持ちになると思いますし、その精神的な体験は、後々まで心に残ると思います。
出来るだけ沢山の方々に見て頂きたい作品だと思います。