戦後を代表する作家・新田次郎氏と、藤原てい氏を両親に持ち、「国家の品格」の著者・藤原正彦を兄に持つ著者による書き下ろしです。大変残念ながら、家族秘話を期待して読むと完全に肩透かしをくらいます。
本の中では、旧満州からの過酷な引き揚げの後遺症(といっても具体的な健康被害については殆ど言及されない)やトラウマ(といっても著者は当時赤ちゃんだったので記憶はないはず)、お母さんである藤原てい氏への複雑な想いが綿々と綴られます。幼かりし日に母の著書「流れる星は生きている」を読み、自分は母から愛されていないのではと思い悩むとありますが、いくら読んだ年齢が若かったとは言え、こんな突拍子もない誤読に共感できる読者は少ないと思います。
家族のエピソードも多少登場しますが、非常に主観的かつ感傷的に綴られていて、正確性を疑いたくなってしまいます。
藤原てい氏や藤原正彦氏の簡潔明瞭な文体とは異なり、この著者の文体は良く言えば語彙が豊富、悪く言えば過度に装飾的で、素人臭さを感じずにはいられません。
強いて言えば、超ベストセラー「流れる星は生きている」の「咲子ちゃん」が本を書くぐらい立派になったのだという感慨は得ることが出来ます。