綾辻作品はすべて読んでいる大ファンだが、実のところ全作品中でもトップレベルで好きなのがこの「殺人鬼2」こと「殺人鬼-逆襲篇」だったりする。
最近でこそ「Another」や「奇面館の殺人」で魅力的なキャラクターを描くようになった綾辻行人だが、基本的に過去作の殆どで、読者が強く感情移入する対象になるようなキャラクターはそれほどいなかった。
別に人間を描くのが弱いというわけではなく、そういう部分で楽しませるタイプの作風ではなかったのである。
しかし、この作品の真実哉少年だけはちょっと違った。特殊な能力を持ってしまったが故に、殺人鬼と戦う羽目になる少年。奇しくも前作で勇敢に戦った少年と同じ音の名前を持つ少年。
彼の力は物理的に作用するものではなく、相手の心に入り込むもの。後の綾辻作品でも見られる一種幻想的な心象風景を張り巡らせ、即物的な恐怖と、心理的な恐怖の双方をぶつける。この設定の妙が素晴らしい。
この少年が非力ながら戦う姿が、他の綾辻作品ではちょっと見られないような楽しさをもたらしているのが特徴。
綾辻行人らしい「仕掛け」も登場するものの、前作程の衝撃はおそらく、ない。しかし、なんとしても読者を驚かせようという綾辻行人の維持はマイナスには働かず彩りを与えていると思う。
なにより、この仕掛けがきっちりストーリー上も意味を持っていくのが良い。
殺し方のバリエーションも前作からさらにおぞましくなり、正統な続編の進化を見せつける。
ラストはこれ以上の続編はなさそうな雰囲気もあるが、「ハロウィン」のマイケル・マイヤーズだって復活したのだ。今回のあとがきで作者が述べている通り、「そのとき」が訪れるのを気長に待とう。
先述の通りミステリ的仕掛けがやや弱いし、スプラッター表現はえげつないが、そうした部分を理解して読めば、純粋に楽しめるエンターテインメント小説だと思う。
なにより、フィクションの「暴力」を駆逐しようとする、規制という「暴力」に作品をもって反論する綾辻行人の心意気を、私は支持したい。