仁木悦子のミステリには、どこかほのぼのとした明るさ温かさが漂っている。殺人などの犯罪を描くミステリ、ほのぼのした明るさも何もないもんだと思う人もいるかもしれませんが、実際そういう印象を受けるのだから仕方ない。犯罪の被害者、時には加害者にまで向けられる優しげな眼差しが作品に温かみを与え、さらにそれが読後感をスッキリとした良いものにしている。
本作は解説の著者の言葉によると、趣きをかえてオドロオドロしいものを書こうと意図していたとのこと、古びた洋館での殺人が書かれていて、いかにもな舞台設定なのですが、やっぱりいつもの調子です。意図していた雰囲気が出ていないので、もしかしたら著者にとっては不満の残る作だったかもしれませんが、読む側としてみれば、ヘタに変わったりしておらずに安心して読むことができます。仁木悦子のミステリはいつもの調子で十分におもしろいのですから。
最近の、読む前から疲れてしまいそうなほど長大で、しかも重苦しい内容のミステリにお疲れの方いませんか?そんな方は仁木悦子のミステリを一冊どうですか?そんなに長くもなく、重苦しくもない。粒ぞろいの楽しいミステリがそろっていますよ。