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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
一人称による “独白系”だから成立する記憶心理ミステリー,
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レビュー対象商品: 殺す者と殺される者 (創元推理文庫) (文庫)
’57年に書かれ、’59年の最初の邦訳版が中古市場で稀書として高値でやりとりされているヘレン・マクロイの名作が、’09年、創元推理文庫創刊50周年を記念して、読者のリクエスト第3位だったことから待望の新訳版で復刊された。(ちなみに第1位は同じマクロイ女史の『幽霊の2/3』)おじの遺産を相続して、マサチューセッツの大学の職を辞して、ワシントン近郊の亡き母の故郷に引っ越した、心理学者の‘わたし’ことハリー・ディーン。移住前に転倒して頭を強打して、記憶を20分間失ったと思われる‘わたし’には違和感が生じる。そしてかつての想い人が今は人妻となってしまったことを聞きショックを受け、移住したクリアウォーターの‘わたし’の身辺で、謎の徘徊者、差出人不明の手紙、消えた運転免許証と、小さな異変が次々に起こり、やがて惨劇が・・・。 ネタバレになるので詳しくは書けないが、そこには思いもよらぬ‘わたし’の記憶の悲劇があった。 作品が書かれた年代から思えば、時代を先取りしたような「記憶」がテーマのサスペンスフルで切ない心理スリラーだが、マクロイは現実と妄想の境界線を行く物語世界を見事に構築し、記憶こそが人間の生涯を形成しているという鋭利な洞察を行っている。 本書は、一人称による“独白系”だから成立する記憶心理ミステリーであり、読み終わってからもう一度‘わたし’のこのモノローグを再読したくなる逸品である。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
伝説の稀覯本の新訳,
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レビュー対象商品: 殺す者と殺される者 (創元推理文庫) (文庫)
冒頭の〈図書館は自伝をフィクションとして分類すべきだ〉という書き出しで、堂々と“信用できない語り手”宣言をしている作者 のフェアな姿勢がまずグッド。 それに加え、主人公の身辺で続発する異変――消えた運転免許証、差出人不明の 手紙、謎の徘徊者――から、勘のいい読者なら、本作の真相の見当をつけることは、 さほど難しくないと思います(とはいえ、現在ではパターンに堕したその真相に作者 なりのアレンジを施し、ツイストを効かせているところはさすがです)。 後半の××を下敷きにしたプロットは、サスペンスの盛り上がりとともに、疎外 された主人公の喪失感を掻き立てるエモーショナルな筆致に惹きつけられます。 結末を予定調和と見る向きもあるのかもしれませんが、『殺す者と殺される者』と いう題名にきっちり落とし前をつける幕引きは、やはり巧いといわざるをえません。
9 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
あまりにも有名な怪奇小説の古典的名作に挑んだ哀切な心理サスペンスの傑作。,
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レビュー対象商品: 殺す者と殺される者 (創元推理文庫) (文庫)
心理派推理小説の巧みな書き手として玄人ファンの人気が高い米国女流ミステリー作家マクロイ女史の「幻の名作」の日本での半世紀振りの新訳刊行待望の第2弾です。本書もまた名のみ高く生きている内に読むのはとても不可能に思えた作品でしたが、多くのミステリー・ファンの長年に渡る執念が実って再び紹介された事を心から喜びたいと思います。小さな大学の心理学講師ハリー・ディーンはある朝氷に足を滑らせて転び20分程の記憶を失う。彼はおじの遺産を相続し事故からの回復を期に職を辞めて故郷の町クリアウォーターへ移住する。嘗て真剣に想いを寄せた最愛の女性シーリアが人妻となった事を知り悲しみに沈むハリーの身の回りでやがて数々の異変が起こり始める。 本書は既に読み終えた方ならすぐに気づくと思われるあまりにも有名な怪奇小説の古典名作を下敷きにして書かれた物だと思います。作品名は書けませんが改めて考えると本書との題名の相似で明白だったと気づきました。著者は得意の心理学を応用し過去の名作物語に新たに複雑なひねりを加えています。ハリーが覚える違和感の正体が遂に明らかになる場面にはおぞましい戦慄を禁じ得ず、周到な計算の基に張り巡らされた巧妙な伏線に著者の実力を思い知らされるでしょう。しかし、この驚愕の真相をクライマックスに持って来る事も出来たのに著者があえて物語の2/3の時点で明かしたのは本書の眼目が謎解きパズルにはなく、怪奇幻想小説に描かれるモンスター的な存在に翻弄され苦悩する真面目で一途な男の哀切な悲劇を描く事にあった為ではないかと私は思います。小説を読み慣れた方ならば終盤の展開は完全に予想出来ると思いますが、それは本書の価値を些かも損ねる物ではなく、逆に男がずるく立ち回らず幸せに背を向けて選んだ険しい道に誰もが共感と感動を覚える事でしょう。本書は暗く地味ながらも誠に渋い味わいの物語ですのでぜひ一読をお奨め致します。
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