冒頭の〈図書館は自伝をフィクションとして分類すべきだ〉という
書き出しで、堂々と“信用できない語り手”宣言をしている作者
のフェアな姿勢がまずグッド。
それに加え、主人公の身辺で続発する異変――消えた運転免許証、差出人不明の
手紙、謎の徘徊者――から、勘のいい読者なら、本作の真相の見当をつけることは、
さほど難しくないと思います(とはいえ、現在ではパターンに堕したその真相に作者
なりのアレンジを施し、ツイストを効かせているところはさすがです)。
後半の
××を下敷きにしたプロットは、サスペンスの盛り上がりとともに、疎外
された主人公の喪失感を掻き立てるエモーショナルな筆致に惹きつけられます。
結末を予定調和と見る向きもあるのかもしれませんが、『殺す者と殺される者』と
いう題名にきっちり落とし前をつける幕引きは、やはり巧いといわざるをえません。