以前小林秀男賞を受賞した作品以来ファンですが、今回も昨年の新聞の書評欄に取り上げられていて、遺作だったことを思い出して読みました。友、恩師との数十年を経た懐古談が走馬灯のように語られて一気に読めました。圧巻は最後のあとがきでした。
「鎖骨を折ったことは、筆を折ることだった。書くことはできない。まるで終止符を打つようにやってきた執筆停止命令に、もう
うろたえることもなかった。いまは静かに彼らの時間を待てばいい。昭和を思い出したことは、消えていく自分の時間を思い出すことでもあった」数年に及ぶ想像を絶する闘病生活の果てに言葉を最後まで残した沈黙の巨人にただただ脱帽するばかりでした。
改めて多田先生のご冥福をお祈りします。