小島信夫90歳、最後の長編小説。
やっと読み終えたぁ、という解放感でいっぱいだ。
とにかく読了まで時間がかかった。それは、読みにくい
という意味ではなく、いったん脇に置いてしまうと、なかなか
続きを読む気が起きないのだ。
ならばやめればいいのだが、やはり読み終えたい、
読み終えなければならない、という呪縛からは逃れられない。
何を言っているのか、何が言いたいのかは最後までわからない。
わからなくてもいいだろう。90歳老人の方々に拡散する思考の
道筋をたどるだけだ。そして、読んだ後から内容をどんどん
忘れてしまう。
保坂和志を入口に、この書を手に取った読者も多いだろう。
私がそうだ。もちろん、昔からの小島ファンも存在する。
しかし、最後まで読み終えた読者は、どれくらいいるのか。
いや、意外と皆さん最後まで読むのではなかろうか。
いったん読み始めると、いやいやながらも途中で投げだせない
「何か」があるように思う。
「小島さんはイジワルで悪人ですけど、ご自分に対しても
それ以上にイジワルですから、けっきょく善人よ」
(24ページ 大庭みな子から小島信夫への発言)
小島信夫という得体のしれない男に巻き込まれてゆくのである。