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40 人中、36人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
超虚構のなかの現実,
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レビュー対象商品: 残像に口紅を (中公文庫) (文庫)
氏の作品と言うのは多くがエンターテインメントやドタバタを強く意識してあり、作者自身の心情や自己表現などといった表現者としてのエゴの部分を非常に制限されたものばかりだった。けっして読者に心を開かず、奇想天外なアイデアで楽しませる、圧倒する、驚かせる。それは氏自身の徹底したサービス精神であり、身辺小説を主とする既存の日本文学への痛烈な皮肉でもあったろう。今作品は言葉が消えていく世界という究極の虚構世界を舞台にしており、一見すればこれまでの氏の作品同様、筒井節が遺憾なく発揮された作品に仕上がっている。作品の着眼点、そこから派生する作品構造など、言葉の専門家たる小説家が為し得る知的ゲームの臨界といった出来栄えで、非常に野心的、刺激的だ。言葉がなくなり制限されゆくなかで、文体は柔軟に変化し、後半、言葉がほとんどなくなった世界では限られた音を重ねるため、文章が詩のように韻を踏む文体になり、ぎこちなく、それでも止まることなく物語が進むそのさまは、まるで電池の切れかけた玩具の車が懸命に走り続けようとしているようで、滑稽でもあり、また切なくもあった。 しかしそういった超虚構世界を舞台に選んだにも関わらず、今作はぎゃくに氏自身の内面の吐露がいちばん色濃く出る結果になった。それが非常に興味深い。両親との関わりや自分の過去、文学観など、これまでになく自身の内面に踏み込んでいる。言葉が制限されるなかで、内面の吐露がぎゃくに制限を緩めたのだ。そんななかで語られる「弱いから反抗するのだ」「一生反抗だろうな」などの言葉は涙が出るほどに切ないし美しい。氏が一見悪ふざけともとれるような小説を書き続けてきた裏に、痛切なる決意があったのだと思うと、氏の過去作品のどれもに新たな感銘が生まれてくるのだ。
21 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
愛するものが消えていく哀しみ,
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レビュー対象商品: 残像に口紅を (中公文庫) (文庫)
最初の章は、『世界から「あ」を引けば』であり、以後、この小説に「あ」の文字は現れない。この章で、筒井康隆を連想させる作家と評論家が登場して、"言葉が消え、その言葉が示していたものが世界から消える”ルールの設定がなされる。章が進むにつれて、どんどん言葉が消滅していく世界。第2部に入るときには、すでに28文字が消失している。そして、凄いことに、単に文字が消えていくことに汲々とした物語ではなく、文字が消えることに哀しみを感じる感動的な物語になっているのである。奇跡のような実験小説の傑作。
19 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
感動のラスト10文字,
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レビュー対象商品: 残像に口紅を (中公文庫) (文庫)
実験的なもので好きずきではあるが、その技術と発想にはうならされる。ちょっと中だるみしているという感じもあるが、ラストは圧巻。 タイトルのでもある、消えてしまった「かつて娘だったような気が するもの」の「残像」に「口紅」を、という発想は、残酷さと切なさが 交じりあって感動的でさえある。 あと10文字~5文字で仮名が全て無くなる、というくらいの時が
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