三島の短篇集はそれぞれ傑作と凡作、つまり「当たり」と「はずれ」が混交しているのが特徴ですが、この短篇集だけは例外で、ほぼ全編、傑作と言っても過言ではない珠玉の作品集です。
三島の作品では「春の雪」が「美しさ」という点で評価が高いのですが、この作品集の中の「軽王子と衣通姫」の方が、短く知名度が低いながらも、その美が圧縮されている点では格段上の出来映えだと思いました。
「死」と「恍惚」が表裏一体の美しさは読んでいて震え上がるほどです。日本文学史上でも、この作品は優に十指に入る傑作短編ではないかと思います。
「スタア」という短編も素晴らしく、ものすごく巧みで、現代の俗っぽさの象徴たる「スター」を通じて、作者一生のテーマである「美」や「自意識」の問題が非常に無駄なく、圧縮された作品です。
一つ一つあげればキリがありませんが、その他にも良作、佳作の目白押しで、これ一冊を読めば三島の文学理念に真っ正面から触れることが出来るという意味でもおすすめです。是非、読むべし。