著者の抱える人気シリーズはどれもニューヨークを主な舞台としている。その中でも歴史が最も長く、最も読者から支持されているのがこのシリーズだ。本書では都市生活者の苦悩と孤独を描くこのシリーズの通底音はそのままに、純粋な謎解き小説の要素も加わり、新境地を見せてくれている。またスカダーと恋人のエレイン、相棒のTJとのやりとりもより軽妙なものとなり読者を楽しませてくれる。スカダーとエレインの関係は本作で新展開を迎えることとなるが、こうした変化に一喜一憂するのもこのシリーズの醍醐味のひとつだ。
ハードボイルド小説に分類されることの多いこのシリーズだが、主人公はアルコール依存症に苦しんだ過去を持つ人間であり、単なるタフ・ガイではなく奥行きのある人間として描かれてきた。それだけに従来のファンには私生活も仕事も順調なスカダーに、物足りなさを感じる向きもあるだろうが、ストーリー展開のおもしろさと会話の妙はそれを補って余りあるものだ。シリーズ最高作と推す人が多いこともうなずける、大人向けの極上ミステリーに仕上がっている。(工藤 渉)
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年に一度、秘密の会をもよおす31人の男たちーここからしてもう推理小説のノリだ。そのメンバーが30年かけて半数近く殺されていくという途方もないスケールの事件をスカダーが調べ始める。そんな状況でもスカダーの調査は相変わらずだ。そこらへんの混ぜ合わせ方が絶妙。これが同じブロックでも、バーニイのシリーズになると(たとえば「泥棒は図書室で推理する」)完全にパロディになってしまうのに、こちらはちゃんとスカダーものとして立脚している。
わりあいと早くに犯人がわかってしまうのはご愛嬌だが、ミック・バルー(スカダーとのお喋りが最高)とAAの集会が重要な複線となっているところなど、ブロックのうまさには舌を巻く。そのほか、エレイン、TJ、「ハード・ウエイ・レイ」など脇を固めるキャラクターもしっかりと機能していて、初期の「ネクラなアル中探偵」の物語ーという範疇にはもはや収まりがつかなくなっている。
僕はその頃のほうが本当は好きなんだけどな。
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