なんとキャロルの処女作がこれというのは、驚愕するしかありません。それほど、巧みで、したたかでさえある文の運び、
全体に流れる不気味なニュアンスに魅せられました。もっと若いころ出合いたかった。
また、マーシャル・フランスの作品が読めないもどかしさ、残念さもありますね。主人公がちょっとだけ挙げる、
フランスの物語の断片が素晴らしい。タイトルもまたそそられます。作中作「笑いの郷」「星の湖」「緑の犬の嘆き」
「桃の実色の影」・・・。
とにかく全編に満ちる空気感が尋常ではありません。ダークで電気を帯びたような街の描写が続くうちに、キャロルの描く
ゲイレンに引きこまれていきます。
主人公トーマスは愛する作家マーシャル・フランスの伝記を書くために作家が終生愛したゲイレンという街を訪ねます。
フランスの家には彼の一人娘アンナがひっそりと暮らしている。
そこに滞在することを許されトーマスは恋人のサクソニーとともに、フランスの足跡をたどり始めます。
アメリカの片田舎の町ゲイレン。ぱっとしない小さな町。しかし、住んでみると何か不可思議な謎がありそうな、
どこか歪んだレンズをのぞいているような、そんな妙な街なのです。
前半のゆったりした展開から一転、後半は謎が明かされホラーファンタジー的な展開になり物語もどんどん進んでいきます。
そしてラストまで、一分の隙もない筆の運びで、驚愕の終幕を迎えます。
キャロルの処女作にして代表作。