島田荘司の長編第3段は、名探偵・御手洗潔のシリーズを一旦封印して書かれた社会派推理です。時刻表トリックという側面も持っており、死体がトランクに詰められて鉄道で発送されるという趣向から、クロフツの『樽』を思い出す人も多いことでしょう。探偵役は、前作『斜め屋敷の犯罪』で脇役として登場した牛越刑事。彼は札幌の刑事ですが、犯行現場が関東だと思われることから何度か関東に出張します。ところが、1983年に発表されたこの時点ではまだ青函トンネルはなく(作品の中でやっと貫通する)、青函連絡船で移動しなければならないというところが時代を感じさせます。
青函連絡船と言えば洞爺丸の沈没事故を思い出しますが、今作にもちょっとだけこの事件に対する言及があります。謎解きには少ししか関係のない言及ですが、心理的にはこの影響は大きいと感じました。この作品は『飢餓海峡』『虚無への供物』と共に洞爺丸に着想を得た3大推理小説に挙げていいのではないでしょうか。