ある凡庸なOLを主人公にした転落と再生の物語。
出だしからスピード感溢れる描写で心掴まれる。善良ながら、無知と愚かさゆえ
男に騙されあっという間に借金を背負い、風俗店、自殺未遂、葬儀ブローカー
犯罪者へと転落していく過程。人生の裏にはこのような罠もあるのだ、と
もう一つの世界を見せられる事で否応なしに好奇心をかき立てられる。
葬儀ブローカーという職業はフィクションだろうか。だが死を隠蔽し忌避する
現代だからこそ、社会の裏で暗躍する彼らの描写にリアリティを感じる。
主人公も日常のすぐ近くにいながら、彼らと関わる事で次第に日常を逸脱していく。
葬儀と死を通じて描き出される現代の異界に背筋が寒くなる思いがする。
作品のキーワードはタイトルにもなっている”死神”と”桜”。
主人公を捕らえ異界へ誘う”死神”。
主人公に気づきを与え再生のきっかけとなる”桜”
それは主人公が出会う象徴的な人物であるとともに、内面の成長を象徴するワード
となっている。その実態が何であるのか、は、ぜひ読んで探してみてほしい。
転落した現代人が日常の裏にある異界を彷徨う、というテーマからはこの本を思い出した。
失踪日記だが失踪日記が作者の実体験から導きだされたリアルで容赦のない世界を描いて
いたのに対し、本書はリアリティの枠組みを少し超え、またそれを描く作者の
眼差しはどこまでも暖かい。それは読む人にとっても、爽やかな印象を残し
心洗われる読書体験になろう。
幅広い年代の方への読書にお勧めしたい。