死海写本はキリスト教にとって都合の悪い情報を含んでおり、そのゆえにカトリック教会は死海写本を隠蔽しようとしてきたという根拠のない陰謀説を展開し、そのセンセーショナルな主張のゆえにマスコミ受けして売れた著作ですが、
(1)現在、死海写本の全容は公開され、キリスト教にとって都合の悪い内容など実際にはどこにもないことが明白になっています。(本書の著者たちが依拠しているアイゼンマンの学説に対する批判としては、EWTNというサイトにFr. William Most,DEAD SEA SCROLLS: THREAT TO CHRISTIANITY?という小論があります。)
(2)死海写本の公開が遅れてきた理由は、写本の一万を超える多数断片を組み立てるパズルのような作業が困難を極めたためです。ドゥ・ヴォーをはじめとする死海写本研究国際チーム内部のカトリック信徒たちが公開を阻止してきたなどという主張の証拠はどこにも存在しません。(死海写本公刊をめぐる学会内部でのごたごたについては、土岐健治「はじめての死海写本」(講談社現代新書)第一章にわかりやすく概説されています。)
(3)本書の第二部では死海写本研究と直接的関係のないカトリック教会批判が長々と展開されていますが、本書の著者たちが持ち上げている異端学者ハンス・キュンクの主張の根拠のなさについては、Joseph Costanzo, S.J. による著作The Historical Credibility of Hans Kungがあります。これもEWTNで公開されています。