例によって、ラブストーリーと伝奇物語が平行しつつ破滅的な結末に向かうという、坂東作品ならではの構成です。四国という島の出自から端を発して、石鎚山と「死の谷」(こちらは作者の創作と思われますが)を対極として、生者と死者、そしてその間にある人たちの間で綱引きが展開されます。
思いを寄せる同級生に何も伝えられないまま、大人になる前に他界した少女の怨念が、神秘的な「死の谷」に漂います。その相手が、池の中に石柱を立ててしまったことから、話はにわかに動き出します。狗神に比べると多少まとまりがなく、ややまったりした進行ですが、スケールは一回り大きくなっています。
登場人物の心理描写に見え隠れする、都会の生活に憧れながらも地方に住まう若者の心の内が、何やら私には他人事と思われません。