本作の持つ独特な倦怠感、緊迫感は、秀逸な脚本と
主役ジャンヌ・モローの存在感だけではなくマイルスのジャズ抜きには語れません。
冒頭いきなり不倫関係にある恋人のモーリス・ロネに夫殺害をうながす電話ボックスのシーンや
彼女が恋人を求めて夜の街を彷徨い歩く姿にクロスする
マイルスのクールなミュートトランペット。
彼のこの頽廃的ムードの付加する詩情は間違いなくこの映画の永遠性
を決定付けてるといえます。
しかし詩情や頽廃を演出するだけなら、既存曲やスタンダードで
こと足りたのかもしれません。
でも即興でなければならなかった。
犯罪へと走ってしまう若者カップルの夜のハイウェイの疾走シーン
で聴かれるマイルスの速いフレーズでもイメージできるように
「頽廃」や「焦燥感」以外にも
「性急さ」「刹那」など狂気に近い人間の衝動が即興演奏であることによって見事表現されてるように思うのです。
これぞ当時若干25歳の新鋭ルイ・マル監督の真骨頂!って感じです。
それとこの映画に深みを加えてる要素は
物語の背景に響く「戦争」。
当時第二次大戦終戦後10年しかたっておらず、舞台である
フランスとドイツの間には複雑な心情が交錯していたハズ。
殺される社長はベトナム、アルジェリアで稼ぐ戦争商人で
ドイツに敗戦したフランスが植民地に対して行った非道さに皮肉が
こもってるし
ドイツ人観光客と若者カップルに生まれる距離感もまた、
第二次大戦を跨いだフランスの世代間の相剋が見える。
ここに単なる「愛憎サスペンス」だけで片付けられない
立体感が生まれてるワケですが、劇中一度も
愛を確かめ合うことのできない主人公二人はそのまま当時の
戦後処理に苦悩するフランス自体を
現してるのかもしれません。