内容紹介
「私は生まれてくるべきではなかった」。そう言い残して2009年夏、25歳の若者は死刑になった。
16歳で母親を殺害し、少年院を出た後、再び大阪で姉妹刺殺事件を犯した山地悠紀夫元死刑囚。
反省はしないが、死刑にしてくれていい。開き直った犯罪者の事件が続く。秋葉原の無差別殺傷事件、茨城県土浦市の連続殺傷事件・・・。
彼らは他人と自分の死を実感できていたのか。死刑にするだけでなく、なぜそうなったのか、どうすれば防げるかを考えるべきではないか。そうでないとすぐ次の凶悪犯が生まれるだけだ。
事件を起こした山地悠紀夫死刑囚は少年時代に広汎性発達障害と診断され、後に精神鑑定では人格障害とされた。
16歳で母親を殺害した男が再び犯した大阪の姉妹刺殺事件を追い、日本社会のひずみをえぐりだす渾身のルポルタージュ。
裁判員裁判が開始された今、一般市民が死刑の評決を下さなければならない時代。だからこそ読んでほしい一冊!
全国の新聞18紙に連載(2008年3月~7月)
室蘭民報/東奥日報/山梨日日新聞/ 新潟日報/ 静岡新聞/岐阜新聞/福井新聞/大阪日日新聞/日本海新聞/山陰中央新報/山口新聞/四国新聞/徳島新聞/高知新聞/ 大分合同新聞/長崎新聞/熊本日日新聞/南日本新聞
内容(「BOOK」データベースより)
レビュー
・何度も読んで時には泣きました。毎日考えさせられインターネットで調べています。「生まれてこなければよかった」と言ってしまう人生は悲し過ぎます。(鳥取県、30代、主婦)
・アスペルガー症候群の子の母です。早く精神面の指導を受けられたら事件を起こさなかったのではと思い、周囲の無関心に悲しくなりました。「反省」が分からないことで苦しむ人がいるのをこの記事を通して理解し手を差し伸べてほしい。(熊本県、39歳、主婦)
・私はいじめられ、友達や先生、親、全てに裏切られ尽くし、何もかも消えりゃあいい! そう思った。生きてられるのは愛してくれる人がいたから。一筋でも光があれば人は闇に呑み込まれない。罪を犯した人は光すら見えなかったに違いない。そういう人を支えたい。もう被害者を出したくない。(青森県、16歳、女子高校生)
・家庭環境や支援が良ければ事件を起こさなかったのではないか。他人ごとに思えません。ご遺族のつらい気持ちは痛いほど分かります。しかし、どれだけ山地から反省を求めようと返らない。そういう障害です。山地の記事はすごく良かった。どうしたらこんな人間を作らずにすむかもっと知りたい。(アスペルガー症候群の子の母)
著者からのコメント
4年前に大阪で女性2人を刺殺し、今年7月に死刑になった山地悠紀夫の人生を追った新聞連載「『反省』が分からない-大阪・姉妹刺殺事件」に大幅加筆しました。この連載は1月、人権擁護に寄与した報道に与えられる新聞労連大賞の「疋田桂一郎賞」を頂きました。
帯にある「日本のリアルな『今』がここにある」というのは、連載を読んで高く評価してくださった作家高村薫さんの言葉です。
また、表紙のイラストは、ドラマ化もされた「ブラックジャックによろしく」「海猿」の漫画家佐藤秀峰さんが趣旨に賛同して描いてくださいました。
山地は16歳の時、山口県で母親をバットで撲殺し、少年院を出て再び事件を起こしました。こんな悲惨な事件を防ぐために何かできないか。ひょっとしたら、再犯を防ぐヒントがあるのではないか。そう考えて取材を始めました。
山地は二つの事件で「死刑でいい」と言い、反省の態度を全く示しませんでした。遺族の気持ちを考えると「そんな奴は死刑になって良かった」と思われるかもしれません。ただ、背景には複雑な事情が絡み合っていました。
彼は幼少期から酒乱の父の暴力にさらされ、小5で父が病死すると水道も止められる母子家庭の貧困生活を経験し、いじめで不登校になり、就職も失敗して、それでも新聞配達で家計を支えました。しかし、母が多額の借金を隠し、交際中の彼女に干渉したことを責めるうち、激昂して殺害してしまいした。
少年院で意外な事実が分かります。精神科医の診断は「広汎性発達障害のアスペルガー症候群」。そのため他人の気持ちが分からず、反省できなかったのです。でも、少年院を出た後は何の支援もなく孤立を深めていきます。
この10年、アスペルガー症候群と診断された重大な少年事件が大きく報道されてきました。ただ、専門家は「アスペルガーだから事件を起こすのではない。周囲から孤立し、様々な要因が重なって事件に至った」と説明します。だから、事件を防ぐには、孤立させないことが重要で、福祉的な支援が欠かせません。
本書は「発達障害をもつ大人の会」も取材し、当事者の悩みや支えあう様子も記しました。
秋葉原や茨城県土浦市の殺人事件など「死刑でいい。反省はしない」と言う加害者が続きます。彼らには他人と自分の死が実感できていたのでしょうか。死刑にするだけでなく、事件の背景を掘り下げないと次の事件が続くだけです。
多くの人に手にしていただき、事件の再発を防止するきっかけになってほしいと思います。
著者について
池谷孝司(いけたに・たかし):共同通信・社会部教育班デスク。1988年、共同通信社に入社。松江支局、広島支局、大阪社会部を経て95年から本社社会部で教育班や東京地検を担当。大阪社会部次長の後、2009年5月から本社社会部次長・文部科学省キャップ。先輩に「妻たちの思秋期」の斎藤茂男、「かげろうの家」の横川和夫・保坂渉、「少年漂流記」の西山明、「未来なんか見えない」の佐々木央ら。
真下周(ましも・ひろし):2001年共同通信社に入社。札幌編集部を経て03年から大阪社会部。大阪府警捜査1課、サブキャップなどを担当し、遊軍記者。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
1988年共同通信社に入社。松江支局、広島支局、大阪社会部を経て95年から本社社会部で教育班や東京地検を担当。大阪社会部次長の後、2009年5月から本社社会部次長・文部科学省キャップ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)