本書は解説に「おだやかなスパイ冒険小説」とあるが、その展開はゆるゆるでおだやかなんてものではない。
まず、最初の44ページまでずっと一つの建物内(政府の庁舎内、情報部か?)での会話。これがまず退屈で進展のゆるさに飽きてしまう。
その後、自殺願望のヒラリー・クレイブンが失踪した科学者・ベタートンの夫人になりすまして旅を続けることになるが、その旅の展開もまた起伏に乏しい。一応、ラストにはそれなりのサプライズが待ち受けているが、最後まで読み続けるには忍耐が必要に思う。
それに、ベタートン夫人の乗った飛行機が墜落した原因が説明されていないのは消化不良。偶然の事故だったのか仕組まれたことなのか? 仕組まれたことなら、なぜベタートン夫人が何者かに狙われなければならなかったのか?
しかも、そのベタートン夫人が死の間際に口にする夫への伝言「彼に伝えて。用心するように、ボリスは危険だから」が不可解。一体、彼女はいつどのようにしてボリスが夫にとって危険な存在だと知りえたのか?
星2つとしたのは、退屈な上、上記のとおり説明されるべき事柄が説明されていないミステリー作品への評価。