20年近く前に読み、その後機会のある毎に山岳部の仲間に貸していた本です。
冬山の経験がある人なら、そのリアリティーに恐怖を感じるでしょう。
前半の登頂までの記述とクレバスの中で生きていることを知り、戻る戦い。
情景描写もさることながら、その心理描写は事故経験者には当時にオーバーラップし
古傷が疼いてきます。
岩や雪をやらない人にも、遭難とは何か、生きるとは何かと臨場感を以て伝わります。
決して諦めないことが「帰る。」唯一の道であることが理解させられます。
もしあなたが、事故にあった時この本で疑似体験したことを思い出せば、あなたも帰れます。
そんな本です。
山での事故を素材にした記録文学では最も怖い作品です。
訳者が現役時代に東大山岳部に籍を置いて居た年齢を重ねた人であることも秀作にした一因でしょう。
文庫版になる価値のある一冊です。
また本書を原作とした「運命を分けたザイル」も私の知る限り最も優れた山岳映画です。