「死なないでいる理由」初めてタイトルを見た時、正直何かぞっとする印象を受けた。死なないでいる理由、いや、生きている事の意味をあらためて考えてみると、その明確な理由は簡単には見出せない。人は、普段大して意識することも無く、それに騙し騙しに意味付けをしたり、わかりやすい自分の物語を作って毎日を過ごしているのかもしれない。そして、理不尽な出来事にあったり、今まで積み重ねてきたものがあっという間に崩れていってしまったときに、落ち込んだり、自信を無くして、「自分は何で生きているの?」「自分って何んなんだろう?」という問いが一気に自分に迫ってきて苦しくなってしまうのかもしれない。そのようなことは、少なからず多くの人が何回かは経験したことがある思う。
そんな時、人は自分以外の人やものに自分の意味を見出そうとするのではないか。自分と何かの“あいだ”に答えを探してみる。しかし、近頃その“あいだ”が無くなってしまっていたり、適切なそれを作ることさえも出来ずにいる人が増えてきている。 本書を読む事で、様々な場面でそのような問題が浮き彫りになってきている事と、問題の根は深いことを感じた。
本書は三部構成になっていて、どれも過去に雑誌や新聞に掲載されたものだが、まとまりのある文章に仕上がっている。ただ、一部が他の部に比べて内容的に多少重めなので、一部から読み始めると苦しくなるかもしれない。また著者が90年代に行なってきた様々な仕事を垣間見れるので、今までに他の文献を読んだ事がない人は、彼の関心領域の広さとその真摯な姿勢を感じられると思う。