こうした歴史の根本的なあり方について、「人間・社会・国家」を枠組みに据えて考察したのが本書である。『イスラームと国際政治』などで知られる博学の歴史学者、山内昌之の問題意識は主に3点だ。第一は「人間の営みは歴史のプロセスの前で無力なままに消え去るだけにすぎないの」かということ。つまり、歴史学の存在意義について。第二は「歴史は科学なのか、それとも文学なのか」。第三は「歴史と現実政治との関わりについて自分の理解を整理すること」。
著者自らが「永遠に答えの出ない大きな問い」と語っているように、本書で断定的な答えは得られない。しかし、ヘロドトスや司馬遷をはじめ、「歴史学の父」イブン・ハルドゥーン、ギボン、内藤湖南、吉田松陰など、古今東西約200人の歴史家の例を引用し、一連の営みをひも解く過程は含蓄と示唆に富んでいる。専門家の姿勢を問う内容だけあって難解かもしれないが、多くの史料を厳密に引用して語られる本書はその文体も含めて、歴史の作法と本質を学べる真摯な1冊である。(齋藤聡海)
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しかし、細かな叙述方法に言及することはない。
歴史論文を執筆する上で心がけることについては参考になるが、
方法論ではないので、そのようなつもりで読むべきではない。
本書は、主に日本史・中国史・イスラーム史を扱う。
著名な歴史家の著作をふんだんに引用しつつ、その意義を考察している。
いわゆるヨーロッパ史は登場しないので、興味のない方は避けたほうがよい。
歴史学とは、哲学とは違い、具体性を重んじる。
そのような見解の下、内容も歴史哲学のような小難しいことではなく、
具体例で色塗られている。
少し穿った見方をするならば、歴史書の紹介本と言えなくもない。
最後の「歴史は過去の政治にして、政治は現在の歴史なり」という
山路愛山の引用がなければ、二つ星であっただろう。
歴史家は、過去にばかり目を向けるのではなく、
現代政治からもインスピレーションを受けることができるのである。
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