広義には考古学に分類される本だが、これまでの考古学のイメージを一新する内容だ。なかでも出色は後半の第二部で、こんな構成になっている。1章:伝説に関わる遺跡・遺物、2章:遺跡・遺物利用のポリティックス、終章:遺跡・遺物認識論から遺跡・遺物の社会史へ。
目の前にある遺跡・遺物から当時のくらしを再構成するだけでなく、それらが今日まで残った理由にも迫る。
もちろん、本書が著者の学位論文を加筆修正したものである以上、専門書の部類と言えるが、文章も平易で、推理小説を読むようだ。
あとがきもいいが、奥付直前の謝辞が素敵だ。「本書執筆のため訪れた全国の遺跡や史跡に同行し(略)てくれた妻由比子に感謝します」。配偶者には外伝の執筆を期待したい。
モノが語る日本の近現代生活―近現代考古学のすすめ (慶応義塾大学教養研究センター選書)が面白かった人にはぜひ薦めたい。