第2次世界大戦史に興味を持つ自分としては、数ある司馬作品の中でも一番おもしろかった作品でした。
特に知られざる日本の戦車についてこれほど正しく描かれた書物はないでしょう。技術的に全然だめな記述も思想的な偏りではなく事実に基づくものであり、痛快この上ありません。現実として日本の戦車はアメリカ軍のM4に全く歯が立たなかったわけですが、そのM4はドイツ軍やソ連軍の戦車には大苦戦を強いられたわけで、世界水準ではいかに日本の戦車はだめだったかという証左になります。三式の装甲の材質の話はちょっと疑問がなくはなりませんが、電動砲塔がうまく動かなかったこと、馬力不足で起動がとても難しかったことなどは、この本で初めて明らかにされたことだと思います。おそらくこれでは実戦の投入されてもあまり役に立たなかったでしょう。
ところが主に技術者系の書き物によると空冷ディーゼルはどうとか、1930年代の設計にしてはとか負け惜しみのオンパレードですが、兵器というのは実戦で役に立ったかどうか以外に全く価値はないものですから、この本は非常に価値がありますね。
あと当時の軍人の雰囲気も面白かったですが、一番興味をひかれたのは変な話ですが、軍隊の日常生活の話でした。意味もないのに装甲板を磨いたり、必要もないのに尾栓をを分解したり。さぼり方って今も昔も変わってないんだな思いました、こういう話って、なかなか伝わらないから貴重ですね。
それから他に収録されている歴史のこぼれ話の数々もとても面白かったです。特に「豊後の尼御前」の話。こんな女性が戦国時代に居たなんて!驚きました。