筆者であるギャディス教授は冷戦史の権威として余りにも有名である。本書は冷戦終結後にあらためて冷戦を振り返り、冷戦後の今だからこそ分かるようになったのは何なのか、という視点から書かれている。ヨーロッパの冷戦のみならず、アジアでの冷戦(朝鮮戦争や中ソ対立)についても詳述されており、筆者の守備範囲の広さを示している。ユーモアや巧妙な比喩が随所に散りばめられている他、訳も非常に優れているため、この種の書物にしては読みやすい。
一番印象に残ったのは、冷戦を起こしたのはスターリンに他ならないという筆者の仮説である。冷戦終結後に入手可能になった東西双方の膨大な資料に基づき、筆者はアメリカ側のみならず、極力ソ連側から冷戦を見ようとしており、その結果、スターリンほど冷戦の形成に大きな影響力を有した人物はいないと結論している。