明治編から通しての、シリーズ全体のレビューとして。座談会形式だが、もしかして本当は座談会ではなく、メモを再構成したんじゃないかという位、流れが淀みなく、各軍人の生涯を回顧できるようになっている。談話ものとは思えないくらい内容が充実していて、著名な軍人と無名な軍人で極端な情報量の濃度が違わないのもいい点。無名軍人の節は確かにつまらないが、全軍人を網羅するんだ、という著者の意地みたいなものを感じる。また、4人があれこれ逸話を引っ張り出して感想を話し合うのだが、陸軍大将というだけで、英国生活が長くて洋酒にうるさいとか、部内で皇族が事故死した時に「作戦は葬儀より重要」と発言したとか、100年も前の人のエピソードが細々と残されているというのも面白い。現代の日本の大将に相当するのは国務大臣クラスだろうが、果同じような企画ができるだろうか?大変な量の記録が残されていることにも驚かされた。エピソードから人物の顔がよく描き出されている。
陸軍軍人というと、国士のように、戦前日本をいいように振り回していたように思うが、明治期の元老級や、東条英機や阿南惟幾など開戦、終戦に立ち会ったごく一部の人を除けば、決して歴史を動かしていた訳ではなく、平時には教官やら部門の長、戦時でも限られた管区、戦区の責任者として、責任範囲の仕事をきっちりやる、国士というより官僚のような淡々とした勤務ぶりだったように見える。「陸軍がのさばった」というのは個々の軍人に責任転嫁できないのか、あるいは終戦時大将に届かなかった年次の少壮軍人が陸軍暴走の真犯人だったのか?大将たちに「暴走」の責めをすべて負わせるのはやや酷であるようにも思えた。