国家の存在意義の一つに、国民を豊かにすることがあることは論を待たない。豊かでない限り、国家の問題を解決するための資金が無いからである。
著者は田中角栄総理の言葉「福祉は天から降ってこない」を引用し、経済成長することが社会福祉により弱者を救済するための有効な方策なのだと主張する。
田中角栄総理は戦後日本を代表する政治家の一人であろう。
著者がこの本の1/3を費やして田中総理について語るのは、一つに国家のグランドビジョンを語って実現した稀有の政治家であること、もう一つは現在まで続く日本の政治・経済の混乱を引き起こした特異点となった人物だからだろう。
田中総理とそれ以降の政治家の経済政策を、例によってグラフを使って見える化し、次々と評価していく様子は非常にキレが良く、読んでいて小気味良い。
歴代総理という言葉にこだわったためか、名前だけ挙げて経済政策にほとんど触れられない総理もいるが、このあたりはご愛嬌だろう。
イデオロギーに囚われること無く、戦後の供給不足のインフレ時には正しかった戦略が需要不足のデフレ時(特にバランスシート不況時)には通用しなくなることを分かりやすく説明している。
209ページ、299ページの表は特に感銘を受けた。それぞれ、大きな政府・小さな政府論が適した時期、破綻すると30年言われ続けて破綻しない日本と財政破綻寸前のギリシャの違いを明確にしているからだ。
また、本書の前半で城内実議員による財政破綻に関する質問主意書と対する政府(財務省)回答を解説し、後半で日本国債格付けの引き下げに対する財務省の反論を掲載することで、財務省の二枚舌を明らかにしているのも注目だ。
これで価格が1000円というのだから破格のコストパフォーマンスと言えるだろう。
251ページの図4-1については、DGPデフレータという誤植、及びグラフの色と凡例が合っていないことを修正することを希望してレビューを終える。