正月には久世さん演出の向田ドラマを観るものだ、と決まっていた。
いつだったか、とうとう終わりとなり、しばらくして
久世さんもいなくなってしまった。
その後も向田ドラマは時折やっているが久世さんでない、
と思うとどうも観る気がしない。
久世さんがじっと観察したおもに俳優たちについての小文が並ぶ。
「私を泣かせた柄本明」「静かに変わった小泉今日子」
「帽子の岸恵子」…ちなみに、樹木希林だけはそのまま
「樹木希林」。
生瀬勝久の章はないのだが、印象的な一文が記されている。
これだけで、生瀬勝久はどれほどうれしかっただろうと
身勝手に想像する。
その他、久世さんが少年の時に出会った本、銀幕に見た西洋の俳優と女優。
そして風景。父の死。
あとがきにかえて、の夫人の最後の文章が濃い余韻を残す。
夫人もたいそうな文筆家なのだと初めて知った。