36枚の四季折々の季節の絵の中に少年が居て、その息づかいが聞こえてくるようです。誰もが平等に貧しい時代の少年の頃、明日は豊かになると不確かだけど確信を持って過ごした日々のひとコマひとコマが描かれているので、幼い頃の思い出と重なって「こんな風景があったなぁ…」と思わずにいられません。
桜、5月の風と青い空、6月の梅雨、7月の海、8月の夜空に輝く星、9月のかげろう立つ海、秋深い日に叱られた時の情景、11月の夕暮れどきの思い出など・・・。中川晟氏のエッセイが添えられてあり、ページを繰る毎に胸の奥からグッとこみあげてくるものが、刹那さであると気付くのに時間はかかりません。どの絵にも生きる事への想いがあり、それは明日へと続く道のようで単なる哀しみや郷愁に留まらないのがこの絵の魅力です。
「我が道を行く」とか『僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る…(高村光太郎)』などと人生はよく道に例えられます。でこぼこ道に曲がりくねった道、山あり谷ありの道に、ややもすると歩むべき人生を諦めたくもなります。でも立ち止った時にそっと手を差し伸べてくれる人が居れば、また前に進むことができると私達は知っています。
この画集『歩いてきた道』の作者も後書きで、こう述べています。『歩むべき道を明確に照らしてくれた数々の出会い、起き上がる力をくださった多くの皆様に感謝いたします。』と。この画集の一枚一枚の絵に、人生の数だけの物語が生まれることでしょう。貴方だけの人生の思いを 物語を紡ぐように 絵に馳せてみたらいかがでしょう。