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短い随筆であり 特に何かを声高に主張する作品ではないわけだが その美しい日本語に惹かれて 本書を何度も繰り返し読んだ。また どこそこに武蔵野の面影が残っていると聞くと 自転車で見に行ったものである。高校時代はそんな時間だけは結構有った。お陰で武蔵野には多少詳しくなった。それから25年経った。
現在の住いは いわば昔の三多摩である。家の近くの大学の構内はうっそうとした雑木林であり 散歩をしていると 独歩の武蔵野に迷い込んだ気がする。武蔵野の面影を残している そんな雑木林は 今では生活の一部としてとても重要なものになってしまった。林を散歩出来るのは 東京では贅沢なのかもしれない。
「武蔵野に歩する人は 道を迷うことを苦にしてはならない。どの路でも足の向く方へゆけば必ずそこに 見るべく 聞くべく 感ずべき獲物がある」
この一文は有名であるが 初めて本書を読んでからの25年を振り返ってみて 人生も同じ事かなと 不図思った。皆さんも同じ思いではなかろうか?
本当に、独歩はうまいです。
山の頂の細密な描写、村の平凡な夕方の光景、宿屋のどこか静かな風景など、独歩さんの作品は写実主義的な「自然美」で溢れています。
それは、日常の喧騒に疲れたときの、あまりに優しく穏やかな、そして紳士的でさえある歌曲のようでもあります。
大学受験に失敗した僕にとって、東京専門学校中退という境遇は、どこかシンパシーをかんじる部分もあり、非常に気に入っている日本人文学者の一人です。
なんとなく侘しく、毎日がどこか孤独で、満たされない時、国木田独歩の世界に入ると、そこにはきっと穏和で美しい自然讃歌が聞こえて来る筈です。
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