「武将列伝」シリーズの「戦国爛熟編」。私は著者の「悪人列伝」シリーズや本シリーズを愛好しているが、それは著者の独特の観察眼による所が大きい。著書の主観が占める割合が大きい気もするが、それが物語性を増し、歴史上の人物や時代背景が活写されている点に魅力を感じる。本作で採り上げられる武将は、竹中半兵衛、大友宗麟、山中鹿之介、明智光秀、武田勝頼、徳川家康、前田利家。採り挙げられる人物の知名度や格に差があるが、それもまた一興である。各編の登場人物達が本作の編間やシリーズの作品間で交差している点も面白さを引き立てている。
武将に関しては著者の好みはハッキリとしていると思う。この視点が上述した人物像の描き方に反映されている。
(1) 評価の高い武将:器の大きい清廉な人物。忠義に篤い人物。
(2) 評価の低い武将:才や欲に溺れて策謀を巡らす人物。
また、各編で話題が広がるのも魅力。「大友宗麟」の章では、普段余り採り挙げられない当時の九州の状況やザビエル等によるキリスト教布教・弾圧の様子も描かれ興味を惹く。「山中鹿之介」の章では、毛利家に偏りがちな当時の中国地方の様子が尼子側から描かれておりこれも興味を惹く。家康に関して、妖刀村正や築山殿を絡めた若き日のエピソードに絞ったのも面白い趣向。
そして主観だけでなく、著者が史料の丹念な精査を行なっている事が文章の端々から窺える。史実性と著者の人物観が共に味わえる歴史ファンには堪えられない作品だと思う。