義経・信長・家康などなど、日本人の英雄・豪傑と言えば、その大半は武家出の人と相場が決まっており、また、我が国の社会では「武士道」なるものが処世訓やビジネス指南の分野ですら持てはやされています。
かほどのプラスイメージに包まれた武士ですが、その実態は果たして如何だったのでしょうか。
本書は、中世武士の職能性や行動パターンを分析した上で、彼らは、法と秩序を軽んじ、私的な利益のために暴力と争闘を事とするアウトローに近い存在であったとし、さらに、こうしたアウトローたちの政治的な結集を可能としたものは何かを考察します。
筆者によれば、あの八幡太郎義家こそ、父母の血を通じ、新興軍閥たる河内源氏の政治的エネルギーと貞盛流平氏の伝統的輿望を一体化する存在なのだとか。また、頼朝の代に至っては、秀郷流藤原氏や中央の衛府武官系が伝える武のイデオロギーを手中に収めるとともに、征夷大将軍という特殊な武官職の獲得により、アウトロー的な存在であった武士を束ね、合法性を備えた半独立政権を樹立することが可能になったと論じています。
中世武士というものに対する著者の見方は些か苛酷に過ぎるのではないかという気もしますが、武家政権の成立をめぐる政治的・社会的な状況を多角的に捉えるという意味で、興味深い内容の本だと思います。