本書は平清盛自身を中心に伝承と事実と著者の推理を織り交ぜて、密度濃く詳細に書かれ、他の清盛書には触れていない事項も多く、参考になりまた面白く読めた。速いテンポの小気味よい筆致で興味深く読み進める。一方で一部に本書の格調に合わぬ記述が気になった。分かり易いと考えたのか、時々カタカナ語や相応しくない表現が入る。「ブルーオーシャン戦略」、「新ビジネスモデル構築」、「ファミリービジネス」、「今ならバンド活動に身を入れ過ぎて勉強しない若者(鳥羽院第四皇子の雅仁)」、「権力を持てば人もひれ伏すし、銀座の女の愛想も違う」等々は頂けない。NHK「新平家物語」が大好きだったようで、本書内で登場人物、清盛=仲代達矢、時忠=山崎努、その他多数の俳優を挙げて「演技は良かった」との回想には違和感を覚えた。また当時は宗子、時子、徳子、盛子、寛子、滋子、璋子、得子等々女性も重要な位置付けだが、彼女らに関する記述が殆どないのは残念だ。興味深い記述もあり、例えば清盛の出生の秘密の各説だ。正室説(忠盛の正室)、落胤説(白河院の子)、不倫説(忠盛と祇園女御の不義の子)、祇園女御の妹説だ。推論は、祇園女御の妹に白河院が手を付けてしまう。祇園女御は白河院に逆上する。困った白河院はその妹を忠盛に下げ渡す。白河院は忠盛に恩義を感じ、清盛と伊勢平氏を優遇するという訳だ。「院政」は、実務役所を院庁、職員は院司、最上位者は別当、次官は判官代、管理職は主典代という。白河院(鳥羽院の祖父)と、鳥羽院の中宮(崇徳院の母)待賢門院(藤原璋子)は密通し、不義の子が崇徳院という噂。律令制の位階は30階級だが、当時は正一位から従六位の18階級(正七位以下の任命はない)。正一位〜従三位が公卿、正四位上〜従五位下が殿上人(又は諸大夫)、ここまでが貴族、正六位以下が侍品。氏神は、皇室が伊勢神宮、藤原氏が春日社、源氏が石清水八幡宮、平家が厳島大明神を新たに取り立てた。藤原基実=「近衛」、基房=松殿、兼実=「九条」、近衛から「鷹司」、九条から「二条」、「一条」、松殿が衰退して、「五摂家」となった。以上備忘録まで。