散りばめられた記号のようなタイトルは「Q」(Question)の後が原曲の頭文字、「A」(Answer)の後がリミキサーの名前の頭文字(「STSR」は「相対性理論」)と推測される。要は相対性理論の課した問いに、アーティストたちが答えると言いたいのだろう。例えばマシュー・ハーバート(M)の手によって、初期のジェフ・ミルズのような狂気のダンス・ミュージックと化した「ペペロンチーノ・キャンディ」(PC)は「QJPCAM」だ。…なのだが、よくわからない部分も多い。
相対性理論の新曲「Q/P」はやくしまるのラップもある、冷めたファンク。
「Q&Q」は荒井由実じみたメロディから、ロックンロール、そして80年代アイドル歌謡風と展開する真部脩一の楽曲。「彼のくつ下を わたしが畳む頃」という秀逸な歌詞はさすがの印象。
「(1+1)」は、アコースティック・ギターとUKガラージのようなブレイクビーツ、後半にはビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」を思わせるフレーズが絡む「ムーンライト銀河」を思わせる楽曲。
いずれにせよ、『ハイファイ新書』〜『シンクロニシティーン』で完成されたスタイルから、大きく変化はしていない印象だ。
以下、各曲の解説。
大友良英による「QGKGAO」は、やくしまるえつこの「ごんぎつね」の朗読や話し声を解体し、ノイズとアコースティック・ギターを交えた楽曲。原曲は不明。
フェネスによる「QSMJAF」は、「四角革命」が原曲。フェネス特有のホワイト・ノイズの海でやくしまるのヴォーカルが悠々と歌う。
スパンク・ハッピー「QHPMAS」は、クラブ・ジャズな「(恋は)百年戦争」と、完全にスパンク・ハッピー化したブラコン風「マイハートハードピンチ」。菊地成孔がデュエットで歌い、韓国語のMCをはさむなど、菊地が真面目にふざけた楽曲。
坂本龍一の「QMSMAS」は「ミス・パラレルワールド」のヴォーカルと、リヴァーブのきいた坂本のピアノとのデュエット。
バッファロー・ドーター「QSSGAB」は「元素紀行」をリアレンジ。クラシカルなチェンバロの音色やクワイアが共存する、めまぐるしいアヴァンギャルドなロック。
アート・リンゼイの「QVSCAA」は、「バーモント・キッス」に細切れのノイズと乾いた民族楽器の太鼓を加えられている。かなりやっつけな印象。
鈴木慶一のリミックス「QMCMAS」は10分超の大作。「ムーンライト銀河」を元に、「シンデレラ」などのフレーズも取り込んでおり、『ヘイト船長とラヴ航海士』以降の彼のソロ作を思わせる。『サウンド・アンド・レコーディング・マガジン』の付録CDに収録されたのと同じ物。
スチャダラパー「QLOTAS」は、スチャダラによるラップも加えられた、フィジカルなファンクネスあふれる、愉快痛快な「テレ東」。
コーネリアスのリミックス「QKMAC」は想像通りのコーネリアス印で、「ミス・パラレルワールド」を下地に彼の楽曲「Music」を掛けあわせたような楽曲。時報やブザーのSEがユーモラスだ。
「相対性理論とは何者か?」といった議論があちこちで展開され、それに対してリミックス・アルバムに『正しい相対性理論』と冠する彼ら。新曲は特に驚きはないが、パブリック・イメージを利用する妙な批評性は健在だ。