ベタなメインビジュアル(ポスター、フライヤー、初期DVD)、超べたな日本語タイトル。これだけで普通は見ない。
以前、アメリカのバイオリン教室のドキュメンタリータッチみたいな映画があったが、そんなものだろうと思った。
みんなでコーラス練習して、最後に盛り上がって終わるのだろうと。
しかし見始めると、最初の数分で、そうではないことが分かってくる。まず字幕:戸田奈津子と出る。
この時点で(おやっ?)と思う。そして主人公を巡る悲劇の数々が、淡々としたショットの積み重ねで物語られ、
観客は気づくと、頭頂部の禿げた魂を喪失した中年男と、北欧の雪の中の小さな町にいる。
その後の展開は、一種の群像劇だが、監督は、思う存分一人一人のエピソードを書き込んでいく。
安易な展開がいっさいない。そして物語は最後の合唱コンクールのくだりになだれ込んでいく。
最後で唖然とするようなラストがくる。なんというラストだろう。
自分はこれを偶然早稲田松竹で見た。映画館で見られて良かった。
ちなみに監督は、18年間も映画から遠ざかっていた人。奥さんが市民合唱団に属していて、
映画のヒントはそこから生まれた。スウェーデンの最高スタッフが彼のために結集。
この映画の主人公の魂の喪失と復活の劇は、監督自身の体験でもあった。だからこそ生まれた現実味と説得力だった。
愛蔵限定版DVDには、特典CDがついている。
レナの歌「Fly with me」、ガブリエラの「歓びを歌にのせて」、
ダニエルを合唱団のみんなが励ます「アメイジング・グレース」、
クライマックスの「As it is in Heaven」など5曲が入っている。
どれもフルコーラスで、きちんとした録音と演奏と歌。
「As it is in Heaven」を聴いていると、映画それ自体に包まれているような気持ちになる。
でも、これらはサントラCDにも収録されている。
だからこの限定版の本当の特典は、監督とキャスト3人(ダニエル、ガブリエル、レナ)へのインタビュー映像だろう。
あまりに作品がいいので、創った本人(監督)を見ることで、がっくりしたくなかったが、
実際のケイ・ポラック監督は、映画が持っていた雰囲気そのままの、大きな包容力を持った実直な人だった。
話す内容も具体的で重要。役者さんたちも、非常にフランクで、どんどん話してくれている。