作詞家・阿久悠さんの紡ぎ出した名曲を、日本のア・カペラグループの代表とも言えるゴスペラーズやトライトーン、RAG FAIRやINSPi、そしてスターダストレビューが歌っているわけですから悪いはずはありません。懐かしい曲たちがそれぞれオリジナル曲を尊重したアレンジでかつ見事なア・カペラの衣装をまとって帰ってきたわけですから。
実力のあるグループによるセッションを聴かせてもらったような印象です。ア・カペラのアルバム企画としても秀逸ですね。
企画は抜群ですが、阿久悠氏のトリビュートアルバムシリーズがなんで「歌鬼(gaki)」というタイトルなのでしょうか。これだけのコンセプトと収録曲、メンバーを考えるともっと違う命名の仕方でも良かったのに、と外野は思ってしまうのです。
スターダストレビューの「また逢う日まで」「白いサンゴ礁」の魅力溢れるハーモニーは、一度聴いた者を虜にする凄みと切れ味と温かさを感じます。根本要の高音の魅力の冴えはこの曲でも本領が発揮されています。
ゴスペラーズの「あの鐘を鳴らすのはあなた」は王道ともいえるアレンジで聴きやすかったですし、ラストの「さらば涙と言おう」のドゥ・ワップ・スタイルでの歌唱は見事にこの曲を蘇らせました。1950年代の歌唱スタイルが懐かしさを倍加させたようです。
トライトーンの「学園天国」も 聴きものでしょう。中間部に「シング・シング・シング」をもってきて「学園天国」とかぶらせるアレンジには痺れました。1曲と言わずにもう1曲収録して欲しかったと思いました。
RAG FAIR&INSPiの「宇宙戦艦ヤマト」のユニゾンは音程が不安定でしたが、その後の展開は彼ららしさが感じられるハジケ方で、楽しんで聴きました。
JULEPSやAJIをこのアルバムで知ったことは収穫ですし、未発表曲「泣き方を知らなかった」も中西圭三が雰囲気よく大人の歌唱を聴かせてくれます。
評判にならないのが不思議な気がする質の良い企画だったと高く評価します。