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最も参考になったカスタマーレビュー
16 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
「歌謡曲の時代」昭和への熱い思いと、平成の世への嘆き,
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レビュー対象商品: 歌謡曲の時代 (単行本)
阿久悠はエッセイの中で繰り返し季節感の喪失に触れている。暑い夏が突然寒い冬に切り替わるような、最近の異常気象を「二季」という言葉で憂いている。秋や春が無くなっていくことと歌謡曲の衰退に、因果関係が無いはずがない。阿久悠はまた、昭和と平成の歌の違いに触れて、「昭和が世間を語ったのに、平成では自分だけを語っている」と指摘している。世間、社会という大きな物語から、個人を中心とした小さな物語へ人々の関心は移行し、歌も、皆が口ずさむ流行歌から、自分や仲間うちだけで消費するipodミュージックやカラオケソングに機能分化している。著者は言う。「聴き歌が世に流れなくなって淋しい。すべてが歌い歌になっている」。 「季節感」「世間」だけではない。「青春」も「酒の飲み方」も、極端な話「人間の心」そのものの在りようが変わってしまったのだと。 「北の宿から」「舟歌」「津軽・海峡冬景色」をヒット曲に持つ阿久悠が、当初“演歌”のフィールドを“アウェイ”として認識し、船村徹を仮想敵として捉えていたという話も興味深い。やがて阿久悠自身がヒットメーカーとなった時、今度は自らがニューミュージック勢にとっての仮想敵となっていたという事実も。山下達郎や細野晴臣が筒美京平を、やはり“仮想敵”として捉えていた話は有名だし、歌謡曲の世界にも、スポーツやほかの文化芸能、一般のサラリーマン社会同様の“世代間闘争”といったものがあったのだ。その「世代間闘争」も今の世は曖昧模糊としたものになっている。 本書に収められているエッセイに通底するのは、「歌謡曲の時代」昭和への熱い思いと、「歌謡曲の存在し得ない時代」平成への嘆きである。それは徐々に進行した時代の変遷なのだろうが、その断層はなぜか「二季」のようにデジタルなものにも思える。 本書は、軽いエッセイとしても読めるけど、昭和を知る人間にとっては、重いメッセージでもある。
5つ星のうち 5.0
時代の味,
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レビュー対象商品: 歌謡曲の時代 (単行本)
以下、大分建設新聞のコラムに掲載した記事。=================================================== 「昭和の日」にテレビで「昭和歌謡」の特番をやっていた。私はワーグナーの崇拝者なので、昔は「歌謡曲なんて」と思っていたが、なるほど、昭和は「歌謡曲の時代」である。とても素晴らしい歌が生まれた時代だ。歌謡曲は歌詞も曲も、何と素晴らしいものかと、思い出し、再発見した。▼作詞家の故・阿久悠さんが、7年前に発行した「歌謡曲の時代」という著書がある。「歌謡曲は時代を喰って生きていた。一九七〇年代は極上の味がした」と書いている。発刊当時は、時代の波に乗って成功した、流行作詞家の言葉だ、と思っていたが、違うのだ。歌謡曲が喰っていた(あるいは阿久さんが喰っていた)「時代」とは、流行とか世相とかいう薄っぺらな表層ではない。人々を突き動かしていた「時代のエネルギー」だったのだ、と、特番の歌を聴いて改めて思った。だから阿久さんや数多くの歌謡曲の作曲家、作詞家を、ワーグナー以上に尊敬する▼昭和のあの頃、歌謡曲はいつも街を流れていた。ただに流行していたのではない、時代から湧き出て、街を流れ、人々の心を潤していたのだ。「川の流れのように」。だから大して歌謡曲に関心がなかった私の心にも、しっかりと刻み込まれている▼歌謡曲は昭和の終わりと共に消えた、と言われる。阿久さんは「そうかも知れない。しかし消えたのは人々の心なのかもしれない」という。時代の責任で歌謡曲が消えたのではない。この時代をどう生きるべきなのだろうか。 ================================================== 本書は「時代」について語っている。阿久氏の作品の解説書や回顧録に終わるものではない。平成の時代は、昭和の時代よりも、豊かで清潔になった筈だ。しかし阿久氏にとっては、「美味しい時代」ではないようだ。阿久氏にはもっと生きて、「時代おくれ」の次の詩、時代を拓く詩をもっと書いて、少しでも時代に味付けをしてほしかった。
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