林あさ美は、デビューして、もう14年にもなるのだそうだ。私は、格別、彼女のファンというわけではないのだが、彼女には、未だに忘れられない強烈な思い出がある。彼女がデビュー直後にテレビのドキュメンタリー番組で取り上げられ、たしかタレントが彼女1人だけという小プロの女社長との二人三脚で、全国を営業して回る姿が紹介されていたのだ。あのときの彼女が、今や歌謡界の中で一定の確固たる地位を築き、テレビの歌番組に出続けているのを見るに付けて、あのときの彼女が懐かしく思い出され、彼女の頑張りに、思いを馳せてしまうのだ。
さて、前置きが長くなってしまったが、彼女の初めてのカヴァー曲アルバムだというこの「歌謡曲がお好き」。その楽曲は、10曲全てが、このアルバムのタイトルどおり、純歌謡曲で構成されている。彼女は、カヴァー曲番組であるNHKの「BS日本のうた」で、器用な歌手として重宝がられてよく起用されているだけに、どの曲も、そつなく歌いこなしている。
ただ、選曲的に、その大半が、歌い上げるというよりは、しっとりと聴かせるタイプの楽曲であるために、アルバムとしては、全体的に、やや、メリハリに乏しいように思う。彼女の基本は演歌であり、純歌謡曲なのだろうが、先に述べた歌番組では、実際に、あらゆるタイプやジャンルのカヴァー曲を歌いこなせる器用さを見せてくれているだけに、もっと歌い上げる曲だとか、ニューミュージックやポップス調の曲を入れるなど、アルバムの構成に幅を持たせた方が良かったのではないだろうか。おそらく、彼女の好みの楽曲なのだろうが、「歌謡曲」という狭いジャンルの同傾向の楽曲にこだわり過ぎたがゆえに、このアルバムの購入層を狭めてしまったような気がしないでもない。