正統的な歌舞伎ファンは「なんじゃこりゃ〜〜!?」って言うかも知れないけど、とにかく楽しい舞台。
“あだ討ちもの”なのだが、喜劇。しかも主役は“討つ方”ではなく、“討たれる方”。この男・研辰(もと刀とぎ職人の辰次)、卑怯でいい加減で小心者で、ひたすら追っ手から逃げ回るばかりで情けないことこの上ない。でもその小物振りが、何とも可笑しく、またどことなく人間の悲哀を感じさせたりもする…。
という中々ユニークな演目を、主演・中村勘九郎(現・勘三郎)×演出・野田秀樹という豪華かつ異色のコラボレーションで、しかも歌舞伎の聖地・歌舞伎座本公演で上演した。
こういうのは一つ間違うと双方とも良さを出し切れないどころか、いい所を殺しあって無残なことになるのだが、今回は、中村勘九郎〜勘三郎の偉大さが、全てを救っている。
というか、中村勘九郎〜勘三郎という役者自体が、“歌舞伎そのもの”というか、彼が舞台の上で芝居をすると、そこに“歌舞伎の空間”が生成されてしまうのだな。
マシンガンのような言葉遊びにコミカルな動きなど、野田演劇の楽しさをたっぷり見せつつも、勘九郎〜勘三郎の存在が最後に最後、舞台を“歌舞伎”につなぎとめている。
常に新しいことに挑戦し、意欲的に歌舞伎のフレームを広げ続けている勘九郎〜勘三郎という役者の底力を見る思いがしました。