どのような恋慕も、身体で愛を交わすことによってその一時はカタルシスを得ることができる。しかし、そういう肉体的な楔を打ち込むことができない想いというのは、一体どこまで続くのだろう?『果てることのない想い』-想像しただけで気の遠くなりそうな、気分の悪くなりそうな、それでいて不思議な陶酔を覚えるような観念だ。
また、『相手を求める』と簡単に言うことはできるけれど、その求める『何か』が肉体以外の何かであるのだとしたら(そして、多分そうなのだろうけれど)究極的に、私たちが愛する人に求めているその『何か』とは一体何なのだろう?
読後は暫し放心してしまった。
焦がれるような切なさが溢れる、秀逸なラヴストーリーだった。
なお、正巳の口からあるものが零れ落ちる場面といい、終盤に袴田の本からあるものがはらりと落ちる場面といい、小池真理子の演出の芸の細かさと上手さはいつもながらさすが…。