麻薬取締官(略称:麻取)という知られざる職業を主人公にあてて点は異色。
彼らは厚生省管轄の公務員でありながら、拳銃所持と逮捕権が認められている特異な存在。
本作はエンターテイメント小説ではあるが、
犯罪組織間の微妙な力関係に、日本、中国、合衆国などの麻取組織が絡み合う、
極めて複雑な展開を呈するため、全編に渡ってかなりの部分に説明的な描写がある。
これは複雑な背景を読み手に伝える意味で必要なわけだが、
過多になると興醒めするため、加減が難しい。
一方、大沢作品の魅力の一つに、スリリングなバイオレンス描写があるわけだが、
本作の上巻を読む限りでは、その方面はやや少ないように思われる。
説明的部分が多く、作品本来の筋書きの配分がやや少ない。
ちょっと話が大きくなり過ぎた感があり、この後の展開に一抹の不安はあるものの、
ホワイトタイガーの正体と三崎の運命の結末を見届けるため、
下巻へと惹きつけるだけの読み応えはある。