5・15事件を契機として佐賀の中学をやめた朝倉先生と次郎の東京での共同生活が描かれています。自由主義のレッテルを貼られた友愛塾に徐々に迫る国家主義の圧力に息苦しさを覚えました。2・26事件を一つの転回点として塾は閉鎖を余儀なくされることが暗示されます。しかし物語はそこに至る前に未完のまま終わってしまいます。とても残念ですが、作者がこの物語をさらに書き進めた時どういう展開がまっているのかに思いを馳せると暗澹たる気持ちになります。朝倉先生、次郎、友愛塾、白鳥会の仲間たちは思想弾圧にあい転向あるいは獄死の選択に苦しむことは必定です。転向しても戦争に駆り出されて戦死したことでしょう。このことを考えるとこの物語は常に今日的意義を持っていると考えられます。
これからも多くの人々によって読み継がれていくべき作品です。