中原俊監督自身によるセルフリメイクが話題となっている新作『櫻の園』を見る前に、すこぶる評判のよかったオリジナルを一度見てからにしようと、わざわざVHSで鑑賞した一本。私立名門女子高で毎年創立記念日に上演されるアントン・チェーホフ原作の戯曲『櫻の園』。映画は、上演開始前わずか2時間における女子高演劇部員たちのリアルな日常と緊張感を、繊細なタッチで描いている。
おおよそ観客が想像するような、女子高生同士の陰湿なイジメ、教師との不倫などといったいかがわしいシーンは一切ない。戯曲に登場するロシアの没落貴族と同じように、世間一般からみればどことなく浮世ばなれして見える学園風景がひたすら美しく映し出される。名門女子高というぶ厚い壁に守られた彼女たちの青春の一コマは、現実には校庭に咲き誇る桜の花のようにはかないからこそ、まぶしく輝いて見えるのだろうか。
前日喫煙が見つかった部員のおかげで一時は上演中止になりかけるのだが、おしゃべりに夢中な女子高生をみているとまるで切実さが伝わってこない。講堂で彼氏といちゃつこうが、校則違反のパーマをかけてこようが、同性愛ごっこをしようが、どこか「私たちは特別、守られているから大丈夫」という根拠のない自信がうっすらと感じとれるのだ。現実を直視しようとしないラネーフスカヤ(櫻の園の主人公)と彼女たちを重ねる演出だったかどうかは定かではない。しかし、女子高生たちの日常をのぞき見するようなカメラには善意以外の何かが明らかに潜んでいる。
いずれにしても、イカ臭い野郎どもがほとんど登場しない本作品は、宝塚が苦手な人や、男子校や共学校でやさぐれた青春時代を送った人の心にはあまり響かないだろう。本作品を鑑賞してまったく共感できなかった自分はといえば、(オスカー美女軍団には多少ひかれるものの)セルフリメイク版を映画館で見るのは「やっぱ、やめた」と思った次第であります。