70~80年代の男たち、あるいは、男の子たちに、「料理とはすこぶる知的なものであり、延いては、料理の出来る男は格好良いのではないか。」という強烈な意識革命をしてくれたのは、この檀一雄の『檀流クッキング』と、曽野綾子の『太郎物語』の両作品ではないでしょうか。残念ながら、最近、男の料理に対してこれ程の影響力を持った作品が見当たりません。今また、読み返してみるべき価値のある作品ではないかと思います。この『檀流クッキング』には92種類の料理が紹介されていますが、細かな手順や分量などは大胆にもほとんど無視されています。この本は、細かな手順や分量だけをきちんと守れば間違いなくひとつの完成品が作れるというマニュアル本などではなく、押さえるところだけを押さえれば、後は自由自在にやってしまえばいい。そうすれば、ここで紹介されている92種類の料理(世界)が、200や、300の料理(世界)に膨らんでいくんだという事をとても楽しげに教えてくれる。そういう本だと思います。