「機関銃要塞」って何だろう?と軍事知識のある人は思うだろう。そんな軍事用語は存在しないからだ。しかし、本書を読み終わると、この題名もなかなか味わい深いと思うようになった。予備知識なしの日本人には、むしろこちらの方が作品の内容にふさわしいかも知れない。原題は『THE MACHINE-GUNNERS』、『機関銃手たち』である。読み終わって原題を確認してナルホドと納得した。
物語は主人公のチャス少年が、墜落したHe111のサドルマガジン付きMG15旋回機銃を「発見してしまう」所から始まる。このMG15の「機銃手達」と取り巻く大人達を巡る物語だ。時期はバトルオブブリテンの後半、1940年末から41年初頭。ヨーロッパを席巻したドイツ軍が、まもなく英国本土上陸作戦を敢行するだろうという時期だ。この時代背景も物語の重要な要素となる。英国の正規軍(伝統ある郷土聯隊で構成される)と郷土防衛軍(予備役/後備役/退役兵を中心に民間人男性で構成)の違いなど、当時の軍事知識のある方が、より深く物語を味わえると思う。
そういう意味では、軍隊オタクにこそふさわしい物語なのかも知れない。現代の日本では軍隊マニアしか判らないであろう、マニアックな描写が数多く登場するからだ。このような描写は、当時の軍国時代に生きた少年達の持つ空気感を上手く描くのに役立っていると思う。訳者あとがきでも同じ事が触れられているが、私の父が不発焼夷弾を分解して玩具にしていた事や、米軍艦上機が連絡船を爆撃している様を楽しげに語っていた事と、チャス達少年の行動は非常に似通っていると感じた。ある意味、戦争自体を面白がっているような雰囲気が共通しているように思う。母はそれを不謹慎だとたしなめていたが、間違いなくエキサイティングな要素はあったのだろう。現代の軍隊マニアの私にも判るような気がする。
日本ではそれを言ってはいけない事になってはいるが(笑)、特に男子はそういう事に面白いと感じてしまうのも事実ではないだろうか。チャスの父は、明らかにこの空気感の理解者(経験者)であり、だからこそチャスは父を愛しているのだろう(続編である『水深五尋』も参照)。父と母に向けられる眼差しには、大きな差がある。この構図も昔日の私と一致してしまい、何だか懐かしくなってしまった。
蛇足だが、この小説は反戦小説ではない。結果的に反戦的になっているとは言えるかも知れないが。読めばきっと判るだろう。